

新生活に向けて、初心に戻る。
晴れた日の満月のように。見えなくてもいつもそこにあるもの。
“シュール”という言葉を
思えば多用していた時期があって、
意味もよく考えずに
その雰囲気に逃げていたな、と反省して
最近は使わないようにしている。
反省する前ならもしかしたら
この作品を安易に“シュール”と片付けていたかもしれないけれど
でもやっぱり
シュールとは違うよな、と思う。
地に足の着いた現実離れ、じゃないけれども
不思議な世界を描きながらも
それは確実に私が生活しているこの現実と
同じ世界であって、
もしかしたら明日“そっち”に足を踏み入れてしまうかもしれないという危うさと
同じ土台に乗っているという安心感が
入り混じっていく感覚。
冷酷な話とほのぼのする話が入っている短編集。
不思議な取り合わせでもあるのだけれど
でもどこかまとまりがあるのがまた謎。
最初のハナシで、かなりひんやりとした、というか
他の人のレビューの言葉を借りれば
“不条理”を感じて、そういう作品なのかも、と
思ったのだけれども、
最後の作品を読み終わったときには
どこか、あたたかい気持ちになれてた。
多分、この作者なりの
この世界への
(ある意味屈折した)愛ってのが
溢れてるんだろう。
このろくでもない、すばらしき世界、って言ったのは
コーヒーのCMだったけど。